2009年5月13日水曜日

コンセプト3: ”愛家”=未完成のいえ

みらいのいえコンセプト紹介(全3回)の3回目、ひとまず最終回です。

みらいのいえ3: ”愛家”=未完成のいえ

家が「完成」するって、本質的にはどうことなのでしょう? 一義的にイメージされるのは、法的な義務としての「完成検査」を受けて承認されるということですね。 でも、ほとんどの家は「完成検査」後に一部手直しをしたり、追加をしたりします。では、「引き渡し」が完成か?というと、これも怪しいですね。 一時的な「完成」でしかなく、その後も、住みながら手直しをしたり、変更工事をしたり、増築をしたりしますね。同居家族が増えたり減ったり、趣味やライフスタイルが変わったりします。だから、「よい工務店と施主は一生のお付き合い」なんて言葉があるわけです。これは決して、「工務店が手抜きをしたから、修復が絶えない」という意味では決してなく、「使いながらつくりつづける」のが本来の姿だということの証しでしょう。家は「完成しない」のです。逆に言えば「完成」は「死」を意味します。 だから、「未完成」という意識をつねにもちたいと思います。

「未完成」の意識はすなわち、家づくりへの「参画」意識へとつながります。「参画」というよりも「育てている」意識と言った方が正しいかもしれない。そうです。家を「有機体」ととらえた表現です。工務店やメーカーなど、他者に「任せている」だけでなく、自分自身が家づくりに「参画」し、家を育てているという意識です。 だから私は、工務店さんや設計士さんに、こうお願いしています。
「200年持つ家は要りません。200年後に完成する家をつくりましょう!」と。 
(注: 予算が足りず、完成させたくても完成できないという現実も加味されている)

私は、ここに”愛家”ということばを使いました。「愛車」や「愛機」と同じ意味です。クルマやカメラといった「無機的な道具」も、製造しているのはメーカーかもしれませんが、「愛」をつける表現によって、いとも簡単に「有機体」へと変わります。つまり、赤子を育てているわけですね。「育てる」感覚があるのとないのとでは、「故障」したときの反応が次のように180度変わります。 

参画意識も育てる意識もなく、「手に入れた」人工物が故障すると、これは「クレーム」という行動につながります。なぜなら、その壊れたものは見知らぬ他人が作ったものであり、金銭との交換という「契約」によって手に入れたものだから。ちゃんと稼働して当たり前なのですね。完成しているのだから。故障品を手にしてしまった自分は「被害者」になるわけですね。一方、そこに「参画」意識や「育てる」意識があったとしたら、「故障」は「看病、ケア」という行動につながります。よく故障してしまう外車が、愛おしくて仕方ないという男性、周りにたくさんいましたよね。彼らは、メーカーやサービス会社を「クレーム対象」とは見ずに、「病院」や「パートナー、相談者」として見ます。自分の子供を育てている感覚と同じなわけです。

回りくどく説明しちゃいましたが、家もまったく同様、だから”愛家”です。”愛家”=「未完成のいえ」=有機体なのです。

さて、皆さんが所有していたり、使用しているモノのうち、その頭に「愛」をつけられるものって、どれぐらいありますか?

オマケ:
ちなみに、「愛人」ってのは例外です。なんでも接頭辞に「愛」をつけりゃ、正当化されるってもんでもないようです。 

ご注意を!


みらい=未完成を楽しむ、一生をかけた家づくり、永遠に終わらない。
  • 家を「有機体」として扱う。「使う」のではなく、参画する意識、育てる意識。
  • つくる人、住む人といった役割を越えた家づくり
  • 工務店だけでは、「ハウス」は作れても「ホーム」はつくれない。
  • そこを使いこなす人が、「つくる」工程にどれだけ参加できたかがポイント。

2 件のコメント:

  1. 恭一さん
    この考え、大賛成です!
    去年、日本建築家協会の環境建築賞を受賞した彦根アンドレアさんも
    「愛されることがsustainableとなることの大切な要件であることがわかりました」
    と。。
    http://nhnjtkkst.exblog.jp/8902641/

    私が住宅教室を一昨年に一般向けプログラムで始めたのは、清水建設にいた時に、いくらプロが色々説明しても、結局は施主の意識が高くないと良い建物が完成させられないと痛感したからなのでした。

    みらいのいえの設計者の方も工務店の方も、恭一さんに出会えてラッキーですね!

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  2. くみこさん

    ご賛同、ありがとうございます! そうです。だからどうやって、私のような一般の人たちに対して、その意識を高めるような機会を提供できるか、本当に重要だと思います。これから、週末にあったできごとを記事にしますが、益々そう思います。くみこさんも是非初志を忘れず、益々がんばってくださいね。一緒にそういうプログラムの具体化を考えましょうよ。

    荒井

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